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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)15085号 判決

原告

株式会社サンエイエッセン

右代表者代表取締役

節英亨

右訴訟代理人弁護士

高橋喜一

被告

武内幸雄

右訴訟代理人弁護士

高瀬迪

主文

一  被告は、原告に対し、五六万四一六六円及びこれに対する昭和六〇年一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一二二万五〇〇〇円及びこれに対する昭和六〇年一月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  前件仮差押・前件本案訴訟の請求の基礎事実

(一) 本件土地売買契約の締結等

昭和五七年七月二三日、原告は売主として、買主である被告との間で、原告の所有に係る別紙目録記載の土地(以下「本件宅地」という。)を、代金を五〇〇〇万円とし、その内金兼いわゆる手付損、倍戻しの特約の付された手付金五〇〇万円は即日払い、残代金は同年九月二二日限り支払うとの内容の売買契約を締結し、同年七月二三日、被告から右手付金五〇〇万円を受領した。

(二) 右締結における節春良の地位

節春良は、原告代表者節英亨の父であつて、官公署関係の公売、払下に参加することを主たる業務とする錦光商事株式会社(以下「錦光商事」という。)を主宰代表するものであるが、本件土地売買契約においては、原告の代理人として折衝、締結したものである。

(三) 本件土地売買の帰趨

本件土地売買契約は、被告の残代金支払債務不履行により昭和五七年一〇月一六日、解除となり、ひいて約旨に基づき前記手付金五〇〇万円は、確定的に原告に帰属することとなつた。

2  被告の行為

(一) 前件本案訴訟

(1) 手付金返還等請求訴訟の提起

昭和五七年一一月一日、被告は原告を相手方とし、本件土地売買契約が被告の錯誤に基づき締結された無効なものであつて、手付金五〇〇万円の返還を求め、あわせて右締結に際して原告に欺罔行為があつたことを理由として、ために仲介手数料一五〇万円の支払を余儀なくされた損害を被つたとして以上合計六五〇万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める訴えを東京地方裁判所に提起し、同庁同年(ワ)第一三四五〇号手付金返還等請求事件(以下「前件本案訴訟」という。)として係属した。

(2) 判決及びその確定

被告は、前件本案訴訟で、節春良において、被告に対し、本件土地売買契約締結当時、本件土地の時価が坪当たり四〇〇万円であること及び本件土地は、帷子川と国鉄、京浜急行電鉄の各鉄道敷地とに囲まれたいわゆる袋地であるところ、国鉄から、国鉄線路の高架下の通行許可を受けているため、公道への通行に支障はないことを述べられたので、そのとおり本件土地の時価額と性状とを措信し、この信依により締結したが、右時価額と性状とはいずれも虚偽であつたとして、いわゆる錯誤無効の主張をなした。

これに対し、前記受訴裁判所は、昭和五九年九月一九日、本件土地売買契約締結当時、被告において本件土地の時価につき錯誤があつたものとは認め得ず、進んで通行路の存否に関する誤信の存在を肯認したものの、該誤信が被告の重過失によるとの原告の抗弁を容れ、結局、被告の請求をいずれも棄却する旨の判決を言渡し、この判決は、控訴されることなく確定した。

(二) 前件仮差押

(1) 不動産仮差押

被告は、前記手付金返還請求権を被保全権利とする本件土地に対する仮差押を東京地方裁判所に申請し、同庁昭和五七年(ヨ)第六九九八号不動産仮差押申請事件(以下「前件仮差押事件」という。)として係属し、同年九月二九日付仮差押決定を得、この決定に基づき、同月三〇日、横浜地方法務局同日受付第四八七一四号をもつて右仮差押登記を了した。

(2) 起訴命令

原告は、右仮差押決定の送達を受けるや、原告訴訟代理人高橋喜一弁護士に授権し、同年一〇月一二日、起訴命令を申請し(同庁同年(モ)第一四六五一号事件)、同月二〇日、起訴命令を得た。

3  主観的要件

(一) 故意

被告は、本件土地売買契約につき錯誤はなかつたことを認識していたにもかかわらず、敢えて前件仮差押申請及び前件本案訴訟の提起をなした。

(二) 過失

節春良は、被告に対し、本件土地売買契約締結に際し、本件土地の公売公告に基づき本件土地の性状等を説明したうえで、右公売公告を交付したものであるところ、被告は、本件土地が、国鉄線路の高架下を通行することができ、現状のままで坪当たり四〇〇万円の価値を有しているものと軽信したが、現地を見分するか、公売公告を検討するかしていれば、容易に右軽信のゆえんに気付き得るものであった。

このような事情に鑑みるならば、仮に前記(一)の故意が存しなかつたとしても、被告は、前件仮差押申請及び前件本案訴訟の提起にあたつて、通常の注意を払つたならば、その申請ないし請求に理由のないことが容易に認識し得たものといわざるを得ない。

4  損害及び因果関係

(一) 借入金に対する利息

株式会社である原告は、投下資本回収のため、本件土地の売却計画を立て、昭和五八年八月一〇日、横浜地方法務局昭和五八年度金第五三三一六号をもつて、仮差押解放金五〇〇万円を供託し、その後、前件本案訴訟の勝訴に基づき、昭和五九年一〇月二七日、これを取戻した(供託期間一年二月一七日間)。

ところで、右解放金については、原告にその資金がなく、かつ金融機関から借入れるに足りる信用もなかつたので、やむなく錦光商事から、利息年一割二分の約定で借り受け、供託日より取戻日までの間を一年二か月半として、その間の利息七二万五〇〇〇円を同社に支払つた。この利息という損害と、被告による本件仮差押申請行為との間には、相当因果関係がある。

(二) 弁護士費用

原告は、前件本案訴訟に対する応訴行為を前記高橋弁護士に委任し、費用、手数料、報酬として合計五〇万円を支払つたが、該弁護士費用もまた被告による前件仮差押申請及び前件本案訴訟提起の各行為の双方あるいは一方と相当因果関係がある損害である。

5  結論

原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、借り入れた仮差押解放供託金に対する支払利息(予備的に、解放供託金に対する供託期間中の商事利率の金員)と弁護士費用との合計額である一二二万五〇〇〇円及びこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和六〇年一月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1(一)は認めるが、(三)は否認する。

2  同2(一)、(二)の(1)は認める。

3  同3(一)は否認する。被告が、節春良の言を信じたのは、春良個人が、公売処分の物件を常時競落している業者であつて、弁舌巧みで自信に溢れていたし、ベテランの不動産業者で仲介者である川口通雄も節春良の言を信じていたこと、被告は不動産取引について全くの素人であつたこと等の事情によるものであり、また被告が、本件土地売買契約締結時に、重大な過失により錯誤に陥つていたとしても、この重過失と、前件仮差押申請及び前件本案訴訟提起の際、被保全権利の存否に関する判断を誤つた点についての過失とは、区別されるべきであつて、右申請及び提訴にあたり、被告が、錯誤について重過失が存したか否かまで判断しなければならないとするならば、被告は、本案訴訟の正確な結論までも判断しなければならないこととなり、不当である。

4  同4(一)のうち、原告が、昭和五八年八月一〇日、五〇〇万円を供託し、前件本案訴訟の勝訴により、昭和五九年一〇月二七日、これを取戻したことは認めるが、借入金の利息という損害と前件仮差押申請との間に相当因果関係があることは争う。その余は知らない。仮差押解放金については、一般に、他から借り入れて調達するものとは考えられていないから、現実に借入れを行つたとしても、借入利息と仮差押との間に相当因果関係はない。同(二)の事実のうち、原告が、応訴行為を高橋弁護士に委任したことは認めるが、弁護士費用という損害と、前件仮差押申請又は前件本案訴訟の提起との間に相当因果関係があることは争う。その余は知らない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1(前件仮差押・前件本案訴訟の請求の基礎事実)のうち、(一)(本件土地売買契約の締結等)は当事者間に争いがなく、〈証拠〉によると、同(二)(右締約における節春良の地位)及び(三)(本件土地売買の帰趨)の各事実並びに錦光商事は節春良(当六九才)のいわゆる個人会社であること、節春良は、昭和五七年二月、本件土地の公売に落札人として関与し、同月一六日の代金納付、同月二二日の所有権移転登記手続を主導的に履践し、右払下代金も自己の出捐に係るものであつたので、公簿上は原告の所有名義を得させたものの、その実質的所有者は自己であると考え、この主観に副う言動をしていたこと、他方、原告(代表者節英亨当四〇才)は、仕出弁当の販売会社であつて、いわゆる会社資産として取得する意図で、本件土地の公売による払下を受けたものの、昭和五八年八月一〇日、本件土地を田辺建設株式会社に売却し、その売得金等で右節春良ないし錦光商事からの借入金を返済したものの、その頃、事実上倒産したものであること、又、被告(当四八才)は、鮮魚仲介業会社の従業員として東京中央築地卸売市場で競り業務をしている者であることが認められ、以上の認定に反する証拠はない。

二同2(被告の行為)のうち、(一)(前件本案訴訟、(1)手付金返還等請求訴訟の提起、(2)判決及びその確定)及び(二)(前件仮差押)(1)(不動産仮差押)は、当事者間に争いがなく、同(2)(起訴命令)は、〈証拠〉により認められる。

三同3(主観的要件)について判断する。

1  まず、本件全証拠をもつてしても、前件仮差押の申請及び前件本案訴訟の提起に際して、被告において該申請・請求につき理由のないことを知つていた(故意)との事実を肯認するに足りない。

2  そこで、過失の存否について判断する。

(一)  前記一、二の争いのない各事実及び認定事実並びに〈証拠〉を総合すると、次の事実を認定することができる。

(1) 原告は、昭和五七年二月一六日、公売落札により本件土地の所有権を取得したが、本件土地の実質的な購入者は、原告代表者節英亨の父である節春良個人であつた。

(2) 本件土地は、その北側で帷子川、西側で国鉄根岸線及び東急東横線の各軌道敷、南東側で京浜急行軌道敷とそれぞれ接するいわゆる袋地であるが、分筆経過に鑑みると、隣接地所有者に対する通行地役権の主張は法律的には可能であるものの、該隣接地は正権原ある第三者によつて占有されている等、現状に照らすと、その権利は実効性を有しないし、また、帷子川に架橋して本件土地を公道に通じさせることも可能ではあるものの、この川の周辺一帯が激震対策地域及び高潮対策地域に指定されていることから、種々の規制を受けており、さらに、国鉄線路側から徒歩で本件土地に入ることは可能であるものの、進入方法に制限があつて、一般的な通行路があるということはできない。以上の形質ないし性状は、公売公告に記載されていた。

(3) 節春良は、自ら本件土地の買受人を探す一方で、豊田正人に対し、昭和五七年三月頃、指値五〇〇〇万円で本件土地の買受人を物色すべく依頼し、その斡旋により、野崎一太郎が、袋地としての本件土地に興味を示し、同年六月頃、現地や所管署等で調査するなどしたが、結局資金難から買受を断念した。しかし、野崎は、不動産取引業者である川口通雄に同年七月中旬頃、本件土地の話をもちかけ、同人から被告に伝えるや、被告は、これを非常に有利な取引であると考え、本件土地購入の意欲を示したので、川口は、同月二二日、被告を豊田に引合わせた。その席で、被告は、豊田から、本件土地の概要、代金支払方法等を聞知した。

(4) 被告は、本件土地を購入することに決し、同月二三日、手付金用の額面五〇〇万円の小切手を用意したうえ、川口らとともに節春良の許を訪れ、同人から本件土地の概要等につき公売公告に基づき説明を受けたが、その際、被告は、特に質問をすることもなく、聞き役に終始した。この春良による説明の中で、坪当たり四〇〇万円という言葉が出たこと及びその現状についての説明から、被告は、本件土地が現況のままで坪当たり四〇〇万円の価値を有しており、国鉄線路の高架下を通行することが可能であり、本件土地が時価よりも極めて廉価な五〇〇〇万円で入手し得るのは、原告が売り急いでいるためであると思い込んだ。そして、本件土地の見分も公売公告の検討もしないまま、直ちに節春良との間で本件土地売買契約を締結し、前記小切手を交付し本件土地に係る公売公告等を受領した。また、本件取引の紹介者である川口ら五名の者に対し、合計一五〇万円の謝札金を支払つた。

(5) ところが後日、被告において調査したところ、国鉄には、線路の高架下の通行を許諾する意思がなく、京浜急行電鉄には、踏切を設置する意思がないことがそれぞれ判明したので、被告は、阿部大輔に本件土地の転売方を依頼したものの、買受人を得なかつた。ここにおいて、被告は、この取引が不正なものであつたとの思を抱くに至り、原告に対し、同年九月二一日到達の内容証明郵便で、錯誤に基づく売買契約無効の主張及び詐欺に基づく売買契約取消の意思表示をなし、あわせて手付金返還請求の通知をなした。

(6) これに対し、原告から残代金の不払いを理由に本件土地売買契約を解除する旨の意思表示を受けたため、被告は、訴訟による解決しかないと決意し、同年九月二九日、前件仮差押を申請するとともに、原告の申請に基づいて発せられた起訴命令に応じて、同年一一月一日、前件本案訴訟を提起した。

以上のとおり認めることができ〈る。〉

(二) よつてまず、被告による仮差押申請行為が、原告に対する不法行為を構成するか否かについて判断する。

前件仮差押における被保全権利の存在は、本案判決によつては認められず、かつ、この判決は確定したというのであるから、特段の事情のない限り、前件仮差押申請にあたり、被告には過失が存したものと考えられるところ、被告は、右特段の事情として、節春良個人が公売処分の物件を常時競落している業者であつて、弁舌巧みで自信に溢れていたし、ベテランの不動産業者で仲介者である川口も春良の言を信じていたこと、被告は不動産取引について全くの素人であつたこと等を主張するが、これらの事実は、未だ右特段の事情と解すべくもなく、被告に過失が存したことを覆すには足りない。

進んで、右認定によると、被告は、原告との間で本件土地売買契約を締結するにあたつて、本件土地を見分せず、公売公告の内容も検討しないで、本件土地の時価が坪当たり四〇〇万円であつて、国鉄線路の高架下の通行権もあるものと思い込み、本件取引が被告に非常に有利であるのは、原告が売り急いでいるためであると軽信独断したことが明らかであるから、時価の一〇分の一以下という異常な廉価に留意し、かつ、総額五〇〇〇万円の不動産取引に際し下見もせず、目前にある公売公告を精査しなかつたという自己に存した落度については、前件仮差押申請にあたつて、自覚していたものと優に推認すべく、しかもかかる落度は、買主としては初歩的かつ重大なものと解されるから、これらの自覚(事実認識)を有する者は、本案訴訟において錯誤の主張をしても、その主張が認容されないか、あるいは、認容されても重過失が認定され、所詮その請求が棄却されるべきことは、通常の注意を払うことにより容易に気付き得たであろうということができる。

従つて、前件仮差押申請に際し、被告が、仮差押申請者に通常要求される程度の注意を尽くしていなかつたことは明らかであつて、前件仮差押申請行為は、原告に対する不法行為を構成するといわざるを得ない。

(三) 次に、前件本案訴訟提起行為が、原告に対する不法行為を構成するか否かについて判断する。

わが憲法(三二条)が国民の裁判を受ける権利を保障している趣旨に照らすと、訴えの提起が不法行為を構成するといえるためには、その請求に理由のないことが通常の注意により容易に認識し得たものと認められる事情が必要であると解される。

そこで、本件について検討すると、被告は、前件本案訴訟提起の際にもまた、前記認定のとおりの認識状況にあつたのであるから、錯誤の主張をしてもそれが認められないか、あるいは認められても重過失が認定されて請求が棄却されるべきことは、訴えを提起しようとする者が通常用うべき注意を尽くしたならば、容易に認識し得たものと認められる。

よつて、前件本案訴訟提起行為もまた原告に対する不法行為を構成するといわざるを得ない。

四請求原因4(損害及び因果関係)について判断する。

1 〈証拠〉によると、春良個人が、競売等による不動産の取得及びその売却を業としていたこと、及びこれを被告が本件売買契約締結当時認識していたことが認められるから、実質上春良個人が取得した本件土地を、春良が原告名義で転売することは、被告にとつて予見可能な事実であつた。また、転売のために仮差押を解放せざるを得ないことは自明で、原告が、そのために相応の出捐をすることもまた、予見可能であつた。

ところで、〈証拠〉によると、原告が、錦光商事に五〇〇万円の借入金に対する年一割二分の割合による一年二か月半分の利息金として七二万五〇〇〇円を支払つたことが認められるものの、本件全証拠を総合しても、年一割二分という利率で借入れをしてまでも、仮差押を解いて本件土地を転売しなければならなかつたことを窺わせる事情は認められず、その主位的主張は認容すべくもないが、商法五一四条が商事法定利率を年六分と定めた趣旨に鑑みるならば、商人がその資金を合理的に運用すれば、年六分の割合の利益を獲得することができるものと認められるから、原告が株式会社であること及び五〇〇万円の金員を一年二か月一七日間供託していたことは、当事者間に争いがない本件では、前件仮差押行為と相当因果関係のある原告の損害は、五〇〇万円に対する年六分の割合による一年二か月一七日分の利息に相当する三六万四一六六円と解される。

2  〈証拠〉によると、原告が、高橋喜一弁護士に対し、前件仮差押に対する解放等の対策及び前件本案訴訟に対する応訴行為を委任し、その費用、手数料、報酬として合計五〇万円を支払つたことが認められ、本件事案の難易、とりわけ前訴は被告の錯誤が認められないか、認められたとしても重過失の認定が容易になされるべき事案であつたこと、被請求金額(原告の失わずに済んだ経済的利益が六五〇万円と少なくないこと)審理の経過(人証調が、四回にとどまつたこと)、その他諸般の事情を併考すると、被告の不当提訴等の行為と相当因果関係のある弁護士費用は二〇万円であるとするのが相当である。

五結論

よつて、被告は原告に対し、五六万四一六六円及びこれに対する本件訴状送達の翌日である昭和六〇年一月一七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるから、本訴請求は右限度において認容し、その余は失当であるから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官薦田茂正)

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